現代妖怪のバレンタインの夜
★配役:♂2♀1両1=計4人
▼キャラクター
狼男♂:
人間から狼人間に変身する獣人。
世を忍ぶ仮の姿は、フリーターの兄ちゃん。
バンシー♀:
すすり泣くと不幸を招く妖精。
世を忍ぶ仮の姿は、OL。
デビル♂:
地獄からやってきた下っぱ悪魔。
世を忍ぶ仮の姿は、デスメタルバンドのボーカル。
バンパイア両:
西欧に住んでいた吸血鬼。
世を忍ぶ仮の姿は、大病院の勤務医。
ちなみに性別は謎。
※OLの叫び声がありますが、被りでも飛ばしでもOKです
壁紙はこちらのサイトからいただきました。
フリー素材・林檎屋小間物店
□夜、とあるオフィス街の一角
狼男:オオオオオオ――ン!
お菓子をよこせ! 悪戯するぞ!
OL二人組:キャーーーー!!!
バンシー:あんた何やってんのぉ……
狼男:おおっ、不吉な顔っ!
久々だな。相変わらず景気悪そうだなぁ。
バンシー:あんた何言ってんのぉ? 超絶好景気よぉ。
今日、失業保険の申請が通ったのよぉ。
再就職して五年目、しかも会社都合のリストラだからピッタリ180日給付〜!
半年間遊んで暮らせるわぁ。あはははははぁ〜!
狼男:そりゃ不景気だなぁ。
バンシー:やめてよ……辛い現実を見せないでよ……
デビル:ヌウウウウウ……!
闇夜に満ちた禍々しい気配……!
召喚陣で、我を呼び出しし者よ。
地獄の大将軍であるサドラー十三世に何用ぞ。
狼男:それ召喚陣じゃなくてマンホール。
バンシー:勝手に落ちたんでしょ……
誰も呼んでないから、下水に流れちゃいなさぁい……
デビル:待て、待つのだ。
吾輩は、暗く長い異次元の梯子を登り、夜の闇を纏い具現化したのだ。
して、者共よ。
狼男:あぁ?
バンシー:はぁ?
デビル:尊敬すべき親愛なる友たちよ。
地上に満ちた凄まじい怨念の渦。
うむ。わかったぞ。
今日がハルマゲドンの日であったか。
バンパイア:違うね。今日はバレンタインデーだ。
バンシー:そういえばそうだったわねぇ〜……
チョコレートゼロの、負け犬たちの遠吠えが心地良いわぁ〜!
バンパイア:うん、三十代以降の未婚女性のことを負け犬というのだったね。
バンシー:あんた喧嘩売ってんのぉ……?
バンパイア:失敬。自虐かと思って君を励まそうと。
狼男:ウオオオオオオン!!
何でどいつもこいつもお菓子をくれないんだ!!
ハロウィンよりも今日こそお菓子が欲しくなる日だろうが――!!
バンパイア:お菓子というかチョコレートだろう。女性からの。
バンシー:はぁ〜……うるせえわねぇ……
ほら、10円あげるわぁ……
そこのコンビニでチロルチョコでも買ってきなさい……
狼男:いらねーよ。
バンシー:はぁ〜?
あんた近所迷惑なぐらい叫んでたじゃないの……
狼男:女からのチョコが欲しいんだよ。
おばさんは女じゃねー。
それぐらいわかれよ、おばさん。
バンシー:犬鍋にするわよ犬っころ……
デビル:フハハハハ!
では吾輩が有り難く受け取っておこう!
こう見えても吾輩は老人に人気があるのだ。特に鷲鼻の老婦人にな。
先週も老人ホームSABATOでゲリラライブをやり、
大鍋の具が飛び散り、山羊の剥製が乱れ飛ぶ興奮の大絶頂――!
バンシー:あんた全然励ましになってないわよ……
狼男:うおおおお!! チョコをくれ!!
バンパイア:はい、どうぞ。
狼男:キュウン?
バンパイア:君たちにもチョコレートをあげよう。
今日はそのために病院を抜けてきたんだよ。
デビル:おおお……!
これは未開のジャングルの儀式で用いられた、
一口かじれば、神憑りか悪魔憑きか、常軌を逸した精神状態となり、
火の周りで夜が明けるまで踊り狂うという、狂乱の果実――!
バンパイア:未開人には、この程度の量のカフェインでも、よく効くんだよ。
バンシー:ねぇ、あんた前から気になってたんだけど……
男なの? 女なの?
バンパイア:バンパイアは変幻自在なのだよ。声を変えるぐらい訳はないさ。
狼男:この際、オカマでもオナベでも何でも良いぜ!
バンパイア:年増はダメなのだね。
狼男:ありがたくいただく!
バンパイア:あ。
狼男:がぶっ!
バンパイア:チョコレートに含まれるテオブロミンやカフェインなどのアルカロイド類は、
多くの動物は代謝出来ないため、チョコレートを食べるときは人間に戻ってから食べるように――
と言おうと思っていたのだが、既に遅かったね。
狼男:ぶくぶくぶく……
バンシー:あーあ……悪い犬じゃなったのにねぇ……
デビル:フハハハハハ!
本命義理チョコダブルゼロの連中と比べれば、大往生であろう!
バンパイア:よっと。
私は彼を勤務先へ担いでいくよ。
動物病院ではないのだけどね。まあ何とか誤魔化そう。
それではよいバレンタインを。健闘を祈る。
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