ゲネシスタ-隕星の創造者-
11話-火竜大逆-
★配役:♂3♀3=計6人
18歳。
黒髪黒瞳の
華僑である両親を早くに亡くし、少なからぬ遺産で悠々自適の生活を送りながら中央官僚を目指す書生。
――という肩書きで、龍仙皇国を流離う『始皇帝』の落胤。
父親は龍仙皇国の『始皇帝』こと『
母親は『
本来なら異系譜の降魔同士で受精は起こらず、稀に受精に至っても奇形や虚弱など遺伝子疾患を抱えているケースが多数を占める。
しかし戴黄麒は両親の
ダイノジュラグバとギオガイザーの二系譜を跨る
二系譜の
ただし、本物の
ダイノジュラグバとギオガイザーの混血から産まれた『麒麟』は、龍と獣の天敵であり、新種の
封星座珠:【瑞兆角】
戴黄麒と旅する
金剛石のように透明で煌びやかな美貌に輝く宝玉の美女。
鎖骨の窪みに金剛石の宝珠が埋まっており、
ダイノジュラグバ系譜の
ダイノジュラグバこと
龍の遺伝子を受け継ぐ仙人ではなく、龍の化身した
五千年前の『封龍の儀』より、
ある者は龍魄のまま彷徨い、ある者は眷属の降魔を乗っ取り、ある者は
何れの
凜嶺娥は、
封星座珠:【金剛龍玉髄】
長い若白髪で左目を隠す
白皙の貌には、
灰色狼の毛皮を羽織っており、毛皮の下には牙と爪の絡み合った異形の腕がある。
ギオガイザー系譜の
後に同系譜の
ギオガイザー系譜の降魔は、負傷すると細胞が万能細胞化する特性を持ち、生命力が著しく高い。
檮杌は万能細胞化による修復のみならず、以前より強靱な体組織を作り上げる性質を持つ。
その好戦的な気質から、命を落とす個体も多いが、歳月を経た檮杌は獰悪極まりない妖獣となる。
かつて
瀕死の重傷を負った妖獣『檮杌』の体は、原型を逸脱した新生組織として再生させた。
左眼は万物の奇穴を視る『
この血の蒸気は、ダイノジュラグバ系譜の
これらの三種は『檮杌』には本来あり得ない体組織であり、生物学上は
主君の仇である
緑閃石の髪と大理石の素肌を持つ猩人の女。
猩人の証である顔の墨紋も、石の紋様ように独特なものになっている。
火竜の息吹も払う石綿の衣を纏い、岩を砕く『
ギオガイザー系譜の
石や鉄を喰らう窮奇の中でも別格の存在であり、鉱物の組成を一瞬で変形させて融合する『岩盤結合』によって己の皮革を築く。
『
猩人たちの任侠集団を取り纏める『
分厚い瓶底眼鏡を掛けた、猩人の男。
柔和な笑みを浮かべる顔を覆う墨紋は、微笑みとは不釣り合いに力強く荒々しい。
ギオガイザー系譜の
化身を解いた姿は、手も足も無い盲目の河馬に似た妖獣で、周囲の物質を手当たり次第に吸い込み、エネルギーに変換する。
分厚い皮膚の下の内臓はマイクロブラックホールとなっており、饕餮の本質は、万物を飲み干す『餓える黒点』である。
死亡するとマイクロブラックホールが炸裂するため、倒さずに封じるか、殺害場所を考慮しなければならず、仙人たちを大いに悩ませた。
貪欲な性癖は、食べ物だけでなく知識にも及んでおり、仲間からは知恵袋としても重宝されていた。
赤い武火の髪と、焦げ色の肌をした仙人の女。
『焔帝』の娘であり、龍仙皇国の藩属『
宗主国の龍仙皇帝より、『焔帝』に代わり、国の統治を任されている。
ダイノジュラグバ系譜の
本来の姿は、獅子の如き鬣を逆立てた、熔岩の血を煮やす二足歩行の竜である。
封星座珠:【業炎鬣】
※以下は被り推奨です
妖獣A両
妖獣B両
妖獣C両
□3に登場。戴黄麒と会話有り。
※ルビを振ってある漢字はルビを、振ってない漢字はそのまま呼んでください。
ゲネシスタwiki 劇中の参考になれば幸いです。
□1/数千年前、冀州荒原
白狼琥:うう……くそっ……
貪虚:大丈夫かい?
白狼琥:邪魔だ、離せ!
貪虚:はい。
白狼琥:いきなり離すんじゃねえ馬鹿野郎!
貪虚:ごめんね。それと僕は馬鹿じゃなくて河馬だよ。
白狼琥:知るか、んなもん。
テメエが余計なことしなけりゃ……
翠艶:お前は
白狼琥:ババア……!
翠艶:何か言うべきことがあるのでありませんか。
白狼琥:ぶっ殺してやる。
その荒れた岩肌、
痛っ――!
(血塗れの背を、礫を連ねた石鞭が打ち据え、白狼琥は地面に倒れ込む)
翠艶:御影石のように美しいその玉容、死の淵で見た翠艶様は、菩薩のようでした――でしょう?
白狼琥:墓石は御影石をご所望か?
小便引っ掛けて野良犬の盛り場にしてやるぜ。
翠艶:弱い犬ほどよく吠える。
調教し甲斐がありそうです。
白狼琥:ノロマが。当たらねえよ。
翠艶:その傷で避けましたか。
(四足獣の姿勢で岩鞭の唸りを躱した白狼琥は、白き妖獣に変じていく)
檮杌:噛み砕く。砂利になれ
翠艶:どうしました
檮杌:ぐううう……
翠艶:お前ごときの牙では、私の肌には歯型すらつきません。
檮杌:ぐああ――!!
翠艶:見上げた蛮勇です。
いえ、狂犬ですね。
お前に手を噛まれても痛くも痒くもありませんが、手を焼かされるのは困ります。
お前が無思慮に噛み付いた竜どもの報復で、
考えたことがありますか。
白狼琥:知るか。
蜥蜴に脅えた負け犬どもは、歯抜けの家畜だ。
家畜は死ね。狼が生きる――!
翠艶:我々
思い遣りと同情の念。竜にはない、獣の強さ。
白狼琥:お題目だな。
翠艶:その通り、お題目です。
しかし大義がなければ、余人は付いてこないのですよ。
大義に泥を掛ける莫迦犬は要りません。
死になさい。
貪虚:ぐうう――……
(突如白狼琥の前に飛び出た貪虚は、身代わりに破岩鞭に打たれ、瓶底眼鏡が宙を舞う)
翠艶:何のつもりですか、貪虚。
貪虚:……僕は目が見えないと思ってたんだ。
君が眼鏡をくれるまでは……
白狼琥:かっぱらってきたついでだ。
ド近眼をめくらと思い込んでるテメエに呆れたんだよ。
貪虚:僕は嬉しかったんだ……
眼鏡のお陰で、世界がこんなにもはっきりと見える。
君にとっては、気まぐれだったんだろうけど……
僕には、地獄に落ちてきた蜘蛛の糸だった。
白狼琥:調子の狂う奴だぜ。
貪虚:
白狼琥:ハッくん!?
翠艶:白狼琥、貪虚の仁徳に感謝することです。
貪虚:ありがとう。
…….眼鏡、眼鏡。
白狼琥:……ほらよ。
貪虚:眼鏡を掛けても、翠艶は綺麗だ。
白狼琥:眼鏡抜きなら?
貪虚:もっと綺麗だった。
白狼琥:いっそ目を瞑ってみたらどうだ?
貪虚:ああ、空想の中の翠艶が一番綺麗だ。
白狼琥:面白いなお前。
翠艶:私は少しも面白くありませんが。
白狼琥:おいババア。テメエは何者だ?
翠艶:殊更言う必要はありません。
お前よりは長く生きて、お前よりは強い
貪虚:地層よりも深く、泰山よりも古い。
白狼琥:やっぱりこいつは……
翠艶:昔の話です。
白狼琥:ババア……どんだけババアなんだ……
痛えっ――!
翠艶:ババアババアと、大概にしなさい。粉砕しますよ。
白狼琥:ババア、いや姐さん!
翠艶:随分と格上げされましたね。
白狼琥:蚩尤に会わせてくれ、頼む――!
翠艶:何故です?
白狼琥:俺は強くなりてえんだ。
竜よりも、
今の俺は、負け犬で野良犬だ……
龍どもの前で、テメエの縄張りを吼えることすら出来ねえ……
俺は狼になりたいんだ――!
狼に、
翠艶:いいでしょう。蚩尤様に取り次ぎます。
お前がよく働く忠犬であればですが。
白狼琥:有り難てえ……!
貪虚:ああ、お腹空いたなあ。
白狼琥:肉でも食いに行くか。
貪虚:僕は大盛りだったら何でも。
白狼琥:姐さんはどうする?
翠艶:あなたたちだけでどうぞ。
私は小食なのです。
白狼琥:そうかい。
行こうぜ、ドン。
貪虚:待ってよ、ハッくん。
翠艶:
しかし或いは――
□2/火眼城、地下牢獄
白狼琥:う、うう……
(石壁の鎖に繋がれた白狼琥が、焼け爛れた眼を開けると、紅蓮に燃える髪の仙人が立っていた)
焔帝仔:何をぶつぶつ呟いている。
気でも狂ったか。
白狼琥:
焔帝仔:久しいな、檮杌。
白狼琥:覇皇の尻尾を舐めて座る、玉座の座り心地はどうだ?
焔帝仔:お前如き俗物にどう言われようと、腹も立たん。
白狼琥:僅かに残っていた
焔帝仔:哀れな奴だ。
六道輪廻に縛られた、畜生道でもがく犬の遠吠え。
何百年、何千年生きようと低俗な思考を堂々巡りか。
白狼琥:は、悟りきったツラしてんじゃねえよ。
解脱でもしたってのか? え?
焔帝仔:解脱か。そうかもしれん。
白狼琥:気が狂ったのはテメエのほうみたいだな。
焔帝仔:牢屋で吼えていろ、犬。
余の眼は、最早お前の這う底辺を見ておらん。
王の視点、神の視点に昇ろうとしている。
白狼琥:…………
焔帝仔:さて、お前の主人を出迎えに行ってくる。
せいぜい捨てられないように祈っておけ。
三年ぶりに会う宿敵だ。
お前はどう変わった、麒麟王――
□3/新王都『
戴黄麒:新王都『
まるで三年前の再演のようだ……
妖獣A:
戴黄麒:――っ!
(戴黄麒の肩を食い破り、血を含んだ妖獣は、全身が腫れ上がり、喘鳴を漏らしながら息絶える)
戴黄麒:麒麟の血を浴びて呪われずにすむと思うな……!
妖獣B:
妖獣C:
戴黄麒:明らかに俺を狙っている……
渾沌の獣ども……
翠艶:手こずっておられますね。
戴黄麒:
それに、その背後にいるのは……
饕餮:君が龍と獣の王様か。
翠艶:
心配は要りません。あなたの下僕です。
貪虚、存分に喰らいなさい。
(指向性重力波が放たれ、不可視の舌のように無数の獣たちを捉え、口腔に暗く穿たれた黒点に吸い込んで行く)
戴黄麒:指向性重力波に……ブラックホール――!
不可視の舌が、妖獣どもを暗黒の胃袋に絡め取っていく……!
饕餮:お腹空いたなぁ。点心にしかならないよ。
翠艶:我慢しなさい。食べ過ぎるとお前が消化されますよ。
饕餮:わかったよ。これから火竜の踊り食いだもんね。
翠艶:生は止めなさい。口腔を火傷しますよ。
饕餮:いいんだ。口の中で転がる断末魔は最高の調味料さ。
翠艶:成る程、竜の悲鳴は食が進みます。
饕餮:そうでしょう? 翠艶にもお裾分けしてあげるよ。
翠艶:楽しみにしています。
戴黄麒:何者だ、お前たちは。
饕餮:君の
翠艶:無能な王は玉座を追われるのが世の常ですがね。
饕餮:ふふふふ。
戴黄麒:この渾沌はお前たちが放ったのか。
饕餮:そうさ。
翠艶:あなたに引き寄せられてしまうとは想定外でしたが。
饕餮:恨まれてるんだろうねぇ、王様。
翠艶:そのようで。
(戴黄麒を試すように笑う、青黒い貪獣と翠の猩人。三人目掛けて石畳を突き抜けて迅る炎の蛇が襲いかかる)
戴黄麒:
焔帝仔か――!
焔帝仔:捕虜を抱えて城で待っているなど性に合わないのでな。
三年振りだな、麒麟王。
あの時はよくも煮え湯を飲ませてくれた。
戴黄麒:火竜は熱いものがお好みだろう?
土産代わりにご賞味頂きたい。
懐かしの渾沌の災禍を。
焔帝仔:……変わっていないな。むしろ小さく見える。
余の中で、お前の虚像が実体以上に大きく膨らんでいたからかもしれん。
落胆したぞ、麒麟王。
戴黄麒:感慨深げに人を見下すとは無礼な奴だ。
お前のどこが変わったのかお教え願いたい。
小皺の数か? 無駄な馬齢か?
焔帝仔:じきに見せてやる。
この三年は三百年にも匹敵した。
もはや渾沌など恐るるに足らん。
戴黄麒:変わったのが貴様だけだと思うな。
言い切っておく。
お前は俺に倒される。
焔帝仔:
戴黄麒:……!?
焔帝仔:
戴黄麒:どういう意味だ。
焔帝仔:知らぬが仏とはこのことだな。
忠告してやる。
飼い犬の躾はちゃんとしておけ。
戴黄麒:……白狼琥が反逆を?
焔帝仔:仕置きは済ませておいたぞ。
戴黄麒:……それは世話を掛けた。
引き取らせてもらう。
焔帝仔:犬の宿代を払っていけ。
戴黄麒:ああそうだな。
お礼にとびっきりの死をくれてやる。
やれ饕餮――!
饕餮:え? 僕?
翠艶:覇皇か
やってあげなさい貪虚。
饕餮:わかった。
ハッくんを痛めつけたこいつは、僕もちょっと許せない。
(口腔の奥の黒点が渦巻き、一体を吸引していく暗黒の渦中に、爆風が叩き込まれる)
焔帝仔:
饕餮:爆風――!?
(爆風が切り裂いた暗黒吸引の無風地帯を炎の蛇が趨り、左右と背後から絡みつく)
焔帝仔:
饕餮:うああああああ――!
焔帝仔:麒麟王、獣肉の土産に感謝するぞ。
余が特別に腕を振るって料理してやる。
焦げ目をつけて、良い具合に焼き上がってきただろう?
戴黄麒:饕餮のブラックホールも、器たる肉体を狙われては手も足も出ないか……
翠艶:手も足もありませんよ、饕餮は。
(片手で石畳を引き起こした翠艶の拳が、石材に叩き込まれる)
(石畳は一瞬で罅割れ風化して砂となって業火に悶える饕餮に降り積もる)
翠艶:火消しの砂です。転がって消火しなさい。
饕餮:はあ、はあ……
翠艶:黄麒様、貪虚。
焔帝仔は私に任せなさい。
あなたたちは白狼琥を助け出すのです。
焔帝仔:置いてけぼりは寂しかろう。
みんな仲良く灰にして、同じ骨壷に詰めてやる。
戴黄麒:女が火達磨に……!
焔帝仔:余の炎は地獄の炎。
獲物を焼き尽くすまで決して消えん。
翠艶:一生まとわりつかれるのですか。迷惑ですね。
焔帝仔:燃えない――? ぐうっ――!
戴黄麒:焔帝仔を鞭で縛り上げた――!
焔帝仔:離せ……!
(破岩鞭に捕縛された体勢から、焔帝仔が爆風の雄叫びをあげる)
翠艶:そよ風ですか?
小揺ぎもしませんよ。
それとも放屁ですか?
火薬臭いこと。
戴黄麒:あの女、爆風の直撃にも耐えた……
饕餮と一緒にいたということは――
翠艶:火薬臭い、臭い臭い
その醜い鱗と疣を削り落としてあげましょう。
焔帝仔:余を舐めるなよ、妖獣窮奇――!
(焔帝仔の体が膨れ、破岩鞭を引き千切り、狻猊王竜の本性を現わす)
戴黄麒:
狻猊王竜:踏み潰してくれる――!
戴黄麒:幾らあの女が岩の体を持つ窮奇でも、大きさが違いすぎる……!
貪虚:大丈夫。
戴黄麒:お前、饕餮か?
貪虚:翠艶も化身を解くよ。
狻猊王竜:肢が動かん……
翠艶:オン・バサラ・チシュタ・ウン――
(王都一帯の地面が鳴動し、土石流となって翠艶一点に雪崩れ込み、石畳や煉瓦を巻き込んだ土砂の柱が噴き上がる)
狻猊王竜:うおおおっ――!?
(剥き出しの地膚を晒す大地に、聳え立つ巍山の如き巨犀が、石畳の蹄を振り下ろす)
巌災公主:山を踏み潰すには体格も体重も足りませんね、
戴黄麒:窮奇……!
あれほど巨大な個体は初めて見る……!
巌災公主:何をしているのです。早く行きなさい。
私も
戴黄麒:わかった。ここは任せたぞ。
狻猊王竜:貴様……如何なる
巌災公主:お前こそ、渾沌の増殖を放置しましたね。
狻猊王竜:何のことだ。
巌災公主:シラを切るつもりなら構いません。
どちらにせよ、お前の謀略は潰れるのです。
実現しない絵空事を聞いても、詮無きこと。
狻猊王竜:畜生が……図に乗るなよ。
此処は余の
業火に飛び込んできた間抜けな獣は、業炎地獄逝きと心得よ――!
巌災公主:業炎地獄が窮奇を焼けるか、試してもらいましょう。
楽しみですね。
地獄の主を、失意の穴に埋めるのは。
□4/火眼城、地下牢獄
戴黄麒:城の中までも渾沌に侵されている……
どこで拾ってきた、渾沌を――
貪虚:たまたま見つけたんだよ。
三年前の、『麒麟の世直し』でばら撒かれた生き残りを。
戴黄麒:…………
貪虚:邪魔だなあ、この妖獣たち。
片付けちゃうよ。
戴黄麒:……好きにしろ。
貪虚:いただきまああす。
(貪虚が服をはだけると、腹部に渦巻く暗黒の虚無が露わになる)
(不可視の舌が異形の獣たちを絡め取り、黒点の胃袋に放り込まれていく)
貪虚:ふう、お腹減ったなあ。
戴黄麒:…………
白狼琥:若――! それにドン――!
貪虚:やあハッくん、助けに来たよ。
戴黄麒:無事か、白狼琥。
白狼琥:……はい。
戴黄麒:説明してもらおう。こいつらは何者だ。
白狼琥:……こいつは貪虚。
九尾様にお仕えする以前からの昔馴染です。
戴黄麒:あの翠の猩人は?
白狼琥:翠艶。
私と貪虚の姉貴分です。
戴黄麒:何のために渾沌を使って、狂獣病のテロを引き起こした。
狂獣病を蔓延させようとも、
渾沌では、世界は変えられない。
それは三年前に経験した……俺たちがよく知っているだろう。
白狼琥:それは……
戴黄麒:言え。命令だ。
白狼琥:…………
この地響き……!
大地を
戴黄麒:……
焔帝仔最強の切り札……!
燃料気化爆弾の創成……!
白狼琥:物陰に隠れろ――!
貪虚:城の壁が……!
戴黄麒:気をつけろ――!
爆風の後は真空……負の気圧が襲ってくるぞ――!
貪虚:崩れる……倒壊する――!!
白狼琥:若様――!!
□5/新王都『
狻猊王竜:はあ、はあ……
三年を掛けて築いた新王都が瓦礫の山か……
(新王都全域を丸々吹き飛ばし、剥き出しになった地膚から土埃が舞う)
狻猊王竜:はっはっはっは――……!
これで一つ……大義が立った。
許せよ、民草……
お前たちの消えた命の灯火は、希望の炎に繋ぐ――
(執念の炎を燃やして笑う狻猊王竜は、晴れていく土埃の先に聳え立つ巍山に凍り付く)
巌災公主:これが
幾度となく竜の
狻猊王竜:ば、馬鹿な……!
ぐあああっ――!!
(流れる土砂で滑走してきた巌災公主の突撃。圧倒的な体格差と重量差で、狻猊王竜は易々と組み敷かれる)
巌災公主:尤も、お前が水竜や地竜であれば少しは違ったかもしれません。
炎も爆風も真空も、
火竜に生まれた不幸を呪うことです。
(巌災公主の前肢が幾度も振り落とされ、鱗が割れ、筋肉が裂け、肋骨が砕ける音と狻猊王竜の絶叫が響き渡る)
狻猊王竜:ぐああっ、うああっ……!!
余は……悪夢を見ているのか……!
天地の頂点に立つ竜が……!
畜生風情に……踏み躙られるなど……!
巌災公主:何度聞いても良いものです。
高慢で思い上がった、捕食される恐怖を忘れた、裸の王者の絶叫。
私の体を心地よく振動させる。
これだから、竜殺しは止められない。
狻猊王竜:余の大義の炎は……!
こんなところで呆気なく潰えるのか……!?
王都を焼き、民草を業火に投げ込み……
大逆の覚悟を決めた余の……逆賊王の大義の炎は……!!
巌災公主:好事魔多し。禍福は糾える縄の如し。
お前の不幸は、私の幸運です。
よからぬ企み事と纏めて、地獄に埋葬しましょう。
死になさい、
狻猊王竜:――――っ!!
(狻猊王竜を踏み砕こうと振り落とされた前肢が、空中を迅る一閃により切断され、宙を舞う)
凜嶺娥:好事魔多し。禍福は糾える縄の如し。
よく言ったものだな。
わしが盛者必衰、を付け足してやろう。
(空中に浮かぶ凜嶺娥は、天女の羽衣のように織物をはためかせ、巌災公主を見下ろす)
巌災公主:……
凜嶺娥:一目でわしの素性を言い当てたな。
狻猊王竜:金剛の
奴は……何者ですか……
凜嶺娥:
彼の
地上最古の窮奇――その名を巌災公主と言う。
□6/新王都『
戴黄麒:くっ……
この赤い染み……
血――!?
白狼琥:……心配要りません、私の血です。
貪虚:ハッくん、全身血塗れじゃないか……!
白狼琥:檮杌は一度喰らった攻撃は、二度と喰らわねえ。
あの気化爆発、モロに直撃ぶち込まれたからなあ。
俺様の
貪虚:ハッくん……君は何ていい友達なんだ……!
白狼琥:お前、相変わらず気持ち悪いなあ。
戴黄麒:見ろ――!
白狼琥:あ、あいつは……!
(凜嶺娥の纏う羽衣が解け、幾条もの帯となり、金剛不壊の死線となって巌災公主に襲い掛かる)
凜嶺娥:脆い。砂の城を突き崩しているかのようだ。
巌災公主:くっ……
白狼琥:あんな布切れで、姐さんの
戴黄麒:あの羽衣は炭素繊維だ。
繊維のしなりとダイヤモンドに匹敵する硬度を併せ持つ、
貪虚:帯の数がどんどん増えていくよ――!
白狼琥:半裸を通り越して、そろそろ全裸だぞ。
戴黄麒:脱げば脱ぐほど強くなる、ということか。
白狼琥:あいつ頭イカれてますよ、若。
巌災公主:……理解に苦しむ現象ですね。
何千年経っても、布切れに切り刻まれるのは合点がいきません。
凜嶺娥:お前の肌の
金剛石は唯、きめ細かく緻密で純粋――それだけのことだ。
巌災公主:露出趣味に純粋を自称されたくありませんね。
凜嶺娥:文句があるなら、さらけ出してみよ。
醜く、生臭く、汁を出し、垢に塗れ、毛が抜ける畜生は皆隠す。
わしの裸は完璧だ。
虫眼鏡で覗こうと、巻き尺を持ち出そうと――
細部に宿る神の美と、非の打ち所のない均整が此処にある。
金剛石は、品評の眼を恐れない。
檮杌:ちったあ人の眼を恐れろ、露出気違いが――!
狻猊王竜:金剛の――! 窮奇の背後に――!
凜嶺娥:――?
(巌災公主の背を駆け上り、宙に躍り出た檮杌の尾が伸びて、凜嶺娥の胸を深々と貫く)
凜嶺娥:ぐ――……
(凜嶺娥の美貌が罅割れ、黒ずんだ炭となって崩れ落ちていく)
檮杌:へっ、ざまあみやがれ。
貪虚:ハッくん、空だ――!
檮杌:流星――うおっ!
(輝く尾を引いて落ちてきた流星の跡地。濛々と煙る土埃を切り裂いて金剛石の一閃が疾る)
凜嶺娥:不覚を取ったな。これで二度目だ。
檮杌:こ、こいつは……
貪虚:まだだ――! 続々と空から金剛石の星が落ちてくる――!
(金剛石の星の落下地点から、無貌の傀儡女が幾人も起ち上がり、檮杌に輝く金剛帯を突き出す)
檮杌:くそっ、こいつら……テメエも含めて全部
凜嶺娥:ようやく気づいたか。頭の悪い狗だ。
檮杌:死ね――!
(檮杌の尾が突き殺した凜嶺娥が崩れ落ちると、入れ替わるように傀儡女の一体が、凜嶺娥に変じて喋り出す)
凜嶺娥:三度目。
檮杌:くそったれ――!
凜嶺娥:四度。わしの寛容は仏を越えた。
そろそろ往生させてやるか。
(貪虚の痩躯が膨れ、出現した手も足もない無貌の河馬に似た妖獣が凜嶺娥と傀儡女を吸引する)
饕餮:おおおお――!!!
凜嶺娥:吸い込まれる――
(饕餮の指向性重力波が、凜嶺娥と傀儡女の一群を捉え、口腔に渦巻く黒点に飲み干していく)
檮杌:助かったぜ……!
饕餮:また彗星が来るよ――!
凜嶺娥:見よ、真昼の空に煌めく金剛石の星屑を。
畜生の冥土逝きに持たせる土産には過ぎたる光景だろう。
檮杌:金剛竹林から打ち上げられているのか……!
饕餮:凜嶺娥も
金剛竹林の
巌災公主:磨き粉にしかならない宝石の屑が絶景気取りですか。
凜嶺娥:よくわしの奥ゆかしさに気づいた。
金剛石は自ら輝くばかりでなく、万物を磨いて光らせる。
お前のような不細工な岩の塊は、摩滅するまで磨いて消滅の他あるまいがな。
巌災公主:枯れ鉱床の
白狼琥、貪虚。
凜嶺娥と
凜嶺娥:わしの眼に輝きが残る内は、畜生如きに
(凜嶺娥と傀儡女たちの金剛帯が輝く帯の奔流となって襲来し、巌災公主の巨躯が削り飛ばされていく)
狻猊王竜:金剛の……!
凜嶺娥:
狗と馬鹿に、わしの宝石箱を食い荒らされて適わん。
饕餮:僕は馬鹿じゃない……河馬だ――!
(黒点の胃袋で凜嶺娥と傀儡女を吸引していく饕餮に、炎の蛇が絡みつく)
狻猊王竜:馬鹿め、させん――!
檮杌:テメエをぶっ殺すのは俺だ、
狻猊王竜:っ――!
凜嶺娥:シャオ――!
檮杌:ちっ――!
凜嶺娥:――!?
(飛び跳ねていく白い狼影を追撃する凜嶺娥の横手から、巨大な前肢が振られる)
(何棟もの家屋を貫通して、金剛石の天女が吹っ飛ばされていく)
巌災公主:硬いですが、軽いですね。
腕の一振りで、軽々吹っ飛ぶ。
凜嶺娥:仏宝よりも尊い、わしの美貌を泥に塗れさせるとは……
閻魔も青ざめて無間地獄逝きを下す、大罪と知れ――!
巌災公主:おや、既に此処は業炎地獄ではありませんでしたか?
饕餮:だったら地獄も大したこと無いね。
檮杌:地獄の鬼も竜も皆殺しだ――!
思いっきり暴れてやろうぜ、姐さん、ドン――!
巌災公主:やんちゃも程ほどにしておくのですよ。
饕餮:いただきまぁぁす――!!
巌災公主:お前は食べ過ぎです。
二人とも、言っても無駄ですか。
私も少し、羽目を外して遊ぶとしましょう。
□7/新王都『
戴黄麒:竜と獣の闘争――
ギオガイザーが想定外に善戦している。
あんな強い
凜嶺娥:かつてはいた。
お前の母親『九尾』も、幾度となく王朝を傾けた、悪辣極まりない妖獣だった。
戴黄麒:お前の感覚で遠くない昔は、数千年だろう。
凜嶺娥:そんなに経っていたか?
戴黄麒:戦闘中に立ち話とは、余裕だな。
凜嶺娥:お前こそ高みの見物だろうに。
蝙蝠を決め込んでいるのか。
いや、鳥と獣ではなく、竜と獣だから
戴黄麒:ちゃんと服は着ているな。
凜嶺娥:見たいのか。
戴黄麒:そうだと言ったら?
凜嶺娥:五体投地で
戴黄麒:ならいい。
凜嶺娥:正気か? 土下座一つでわしの裸が拝めるのだぞ?
戴黄麒:少しは恥じらえ。有難味も何もなくなる。
凜嶺娥:それはお前たち人間の雄と雌の、求愛儀式だろう。
わしは下賤の劣情を刺激するために裸身を晒しているのではない。
戴黄麒:脱ぎたいのか?
凜嶺娥:羽衣に隠した六道随一の
戴黄麒:…………
凜嶺娥:何か言ったらどうだ。
戴黄麒:あれは巌災公主だな。
凜嶺娥:話を逸らしたな。
戴黄麒:…………
しかし巌災公主は。
凜嶺娥:死んでいる。
始皇帝により、
巌災公主の亡骸は、
戴黄麒:……奴は何者なんだ?
凜嶺娥:さあな。
お前の飼い犬、曲者かもしれんぞ。
或いはあれの背後に――
巌災公主:泥仕合となりましたが――王手です。
(傀儡女たちの金剛帯に無数の裂目を穿たれながら、巌災公主は巍々と仁王立ち、狻猊王竜を踏みつける)
狻猊王竜:う、うう……
巌災公主:お前の
彼は
竜は等しく抹殺すべき生き物ですが、割合にマシな部類でした。
翻って、お前は最低です。
覇皇に
狻猊王竜:…………
巌災公主:いいえ、褒めているのですよ。
我々
お前のような屑は、殺せば大義が立つ。
私も、気分良く甚振れるというものです。
檮杌:姐さんの鞭打ちは面白えなあ。
饕餮:あーあ……僕が食べたかったなあ。
檮杌:死肉で我慢しとけ。
饕餮:ちぇ。
戴黄麒:…………
凜嶺娥:ケダモノの祭りだな。
強者の凋落を嬉々として囃し立てている。
戴黄麒:…………
凜嶺娥:醜いだろう、獣どもは。
お前がわしと同じ龍の血を引くなら、わしの言葉がわかるはずだ。
戴黄麒:……焔帝仔を助けないでいいのか。
凜嶺娥:わしが手を下すまでもない。
畜生どもは、真の地獄の炎で、悉く灰になる。
巌災公主:念仏は唱えましたか。
では死になさい。
戴黄麒:……なんだ、この地響き。
巌災公主:地震――?
いえ――
戴黄麒:
檮杌:祝融山だ――! 祝融山が熔岩を噴き上げてやがる――!!
(天空へ噴き上がった熔岩の塊は、山頂に爪を立てるように流れ落ち、徐々に流動する熔岩龍の形状を形作っていく)
饕餮:龍だ……! 山頂の火口から熔岩の龍が這い出してきた――!
戴黄麒:あれは……!
凜嶺娥:
狻猊王竜:親父、様……
(沸騰した爬虫類の貌が、煮え立つ熔岩を零しながら口腔を開く)
戴黄麒:
凜嶺娥:下がれ。輻射熱だけで消し炭となるぞ。
檮杌:姐さん、危ねえ――! 避けろ――!
巌災公主:――!?
(祝融山に熔解する爪を立てた業炎神龍が、超高熱の輝きを零し、解き放つ)
(太陽も霞む核融合の集束光線が王都の跡地を駆け抜け、真っ白い業炎地獄に消え去る巌災公主)
戴黄麒:…………!
凜嶺娥:もう目を開けても大丈夫だ。
戴黄麒:……視界が歪んでいる。
凜嶺娥:『
蜃気楼に歪む景色に映る、赤く燃ゆる残炎は、百億の赤鬼が踊り狂う地獄の如し。
(蒸発した石材が異臭を放ち、赤熱した残炎に集られながら、巌災公主は硝子化した彫像となって沈黙している)
檮杌:ね、姐さん……!
饕餮:そ、そんな……!
戴黄麒:何故
騙し討ちにされても、可愛い我が子ということか?
凜嶺娥:シャオは、アグニを裏切ってなどいない。
戴黄麒:どういうことだ?
凜嶺娥:……勝てなかったのだ。
ブラフマーとアグニの差は絶望的で、闘いの先には、唯無惨な敗北しかなかった。
それでも竜は、人は、獣は、噴き上がった叛逆の炎に、一縷の望みを託す。
アグニは引くに引けなかった。負けるとわかっている闘いに――
だからシャオはアグニを祝融山に封じ込めた。
そして龍仙皇国への帰順を宣言したのだ。
己の
ブラフマーへの、龍仙皇国への叛逆の炎、希望の火を絶やさぬために――
最愛の父の名誉を護るために、シャオは逆賊王の汚名を被り、堪え忍んできた。
狻猊王竜:親父様……
何故目覚められた……
何故私のために、そのような、惨めな姿を晒される……
あなたは私を恨んでいるのではなかったのか……
あなたを裏切った私を……
何故今更……
戴黄麒:
凜嶺娥:焔帝仔の封印を破り、
その上、
〝天帝の呪い〟に蝕まれる中、渾身の力で
アグニよ、己が身より
狻猊王竜:何故今更、父親面をされるのだ……
私が……
真の逆賊王の名乗りを上げると誓った今になって――!!
(狻猊王竜は宙に舞い上がり、力無く崩れていく業炎神龍に突進していく)
凜嶺娥:シャオ――!!
戴黄麒:焔帝仔――
お前の言う変化とは……
狻猊王竜:余は焔帝の子、焔帝仔――!
覇皇よ、皇国よ、刮目せよ――!
今焔帝を討ち、
余が新たなる神の一柱、
(業炎神龍が断末魔の火柱を噴き上げ、祝融山から末法の火が天地に降り注ぐ)
凜嶺娥:アグニ……兄上――!
(凜嶺娥は羽衣をはためかせ、親子の竜が争う、祝融山へ向かう)
戴黄麒:
くっ――……
末法の世に降り注ぐ、裁きの炎のようだ……!
祝融山から離れなければ――……
檮杌:姐さん、姐さん――!
饕餮:近づけないよ、熱の塊になってる――!
檮杌:姐さんが、また死んじまう……
戴黄麒:ハク――!
檮杌:若――!
戴黄麒:饕餮、巌災公主の外殻を剥がして吸い込め――!
核である本体は無事かもしれん――!
饕餮:わかった――!
(超高熱で硝子質に熔解した外皮が罅割れ、赤く燃える残炎と共に、巌災公主の外殻が剥がされていく)
翠艶:う、うう……
戴黄麒:生きていたか……!
ハク、お前の尾で
檮杌:じっとしてろよ。動くと風穴空けちまうぜ。
戴黄麒:よし、退却するぞ――!
饕餮:待って、僕、お腹一杯で……
戴黄麒:吸引したエネルギー量が多すぎて、ブラックホールが極大化しているのか。
檮杌:しょうがねえなあ。
まとめて運んでやる。
(手足の無い河馬に似た妖獣は、分厚い眼鏡を掛けた青年に戻り、檮杌の背に跨る)
貪虚:ありがとう、ハッくん……
(最後に戴黄麒が騎乗すると、白き凶獣に命令を下す)
戴黄麒:行くぞ、白狼琥――!
檮杌:くっそ、三人はちっときついな。
お前ら重てえんだよ……!
特に窮奇のババア……!
翠艶:……聞こえていますよ。
檮杌:うおっ。
翠艶:後で覚悟しておきなさい。
檮杌:こいつ棄てていこうか。
戴黄麒:棄てるな。巌災公主には話がある。
翠艶:奇遇ですね。私もです。
戴黄麒:ともかく話は後だ。
祝融山の噴火に巻き込まれる。
王都『
□8/
白狼琥:若、今日の朝刊です。
戴黄麒:
偏向が酷すぎて、報道の体を為していない。
白狼琥:人類統合体の新聞です。
戴黄麒:『
翠艶:焔帝仔――いえ、もう焔帝ですか。
奴の狙いは、これだったのでしょう。
戴黄麒:お前たち反政府組織の狂獣病テロは、まんまと利用されたということだな。
翠艶:でしょうね。捜索の手が温いので、
戴黄麒:どうする、巌災公主。
翠艶:想定の範囲内です。
戴黄麒:最悪の事態を想定して、お手上げか?
翠艶:最悪の事態は、我々の真の目的が露呈すること。
狂獣病の蔓延が本義だと思い込んでいるなら、何の問題もありません。
貪虚:新王都で伝染させた分は全滅しちゃったけど、渾沌はだいぶ繁殖したよ。
翠艶:そろそろ頃合いでしょう。
愚かなり焔帝仔。
お前の思惑だけで、世の中は回っているのではありません。
戴黄麒:聞かせてもらおうか。
お前たちの真の目的を――
翠艶:
渾沌こそ、
戴黄麒:――……!
貪虚:驚いたでしょう、王様?
ハッくんが言えなかったこと、許してあげてね。
戴黄麒:確かに……
翠艶:
我々は
戴黄麒:俺も仲間入りさせてもらおう。
翠艶:
戴黄麒:
俺の悲願を叶えるには、
翠艶:いいでしょう。
貪虚:よろしくね、王様。
戴黄麒:ああ、これから頼むぞ。
翠艶、貪虚。
白狼琥:…………
戴黄麒:ハク、どうした?
白狼琥:いえ――……
私も、嬉しく思います。
若様が、私の旧友たちと打ち解けて。
戴黄麒:…………?
白狼琥:…………
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