サイバーアリスワールドエンド
〜メルヘン百景〜

★配役:♂2♀1=計3人

アリス♀
ご存じ童話界のレジェンド
今回は、赤ずきん他、童話ヒロインになりきり。

シェム♂
悪戯兔
狼、木こり、その他モブ役

ハートの女王♂
童話のなりきりでも、Queen-Guy


※ルビを振ってある漢字はルビを、振ってない漢字はそのまま呼んでください。


☆1/赤ずきんの森


赤ずきん:森の中ね。

狼:がおー!

赤ずきん:きゃあ、狼さん。
      の被り物をしたウサギさん。

狼:赤ずきんめ、食べちゃうぞー。

赤ずきん:はいニンジン。

狼:ガリガリガリ。ニンジンうめえ。

赤ずきん:ウサギ穴の先は、まだワンダーランドね。
       ワープには失敗したの?

狼:ワープには成功した。けど――

おばあさま:おーっほっほっほ。
       逃がすわけないじゃないの、このバイキンども。

赤ずきん:まあ、オカマのおばあさん。

おばあさま:誰がオカマよ!

赤ずきん:ごめんなさい、女装趣味のおじいさん。

おばあさま:むきいいいい!!!!
        
        エェェェェェス!!!
        スペードのエェェェェェェス!!!!

        赤ずきんちゃんから、赤いちゃんちゃんこちゃんに変えておしまい!

赤ずきん:赤ずきんちゃんって、猟師さんが鉄砲持って、赤ずきんちゃんを追い回すストーリーだったかしら?

狼:そういうストーリーに改変したんだ。
  管理者アドミニストレーターはやりたい放題さ。

おばあさま:あんたたちは、どれだけ好き勝手暴れても、アタシの手の内。
        虫かごに放り込まれた虫よ。

狼:俺たちはハートの女王が支配する仮想環境サンドボックスに閉じ込められた。
   何度ワープしても、ワンダーランドの中をぐるぐる回るだけだ。

おばあさま:そういうことよ、この虫けら!

赤ずきん:どうしましょう。

狼:ちょっと待ってろ。考える。

おばあさま:学校のお便所で怪談となって語り継がれるがいいわ!
        撃ち殺せ! ユーアーファイヤード!!!!

狼:ひとまず仕切り直しだ。
   ワールドチェーンジ! 

   ハックな〜う!!!


☆2/金の斧の女神の湖


木こり(嘘つき):ワンダーランドは、ワールドエミュレーターで動く世界の一つ。
          お伽噺の登場人物になりきって遊べる箱庭アプリだ。

          本当なら、お前さんをもっと下の階層、OS領域に連れ出すはずだったんだが――

めがみ:絵本の中の箱庭に閉じ込められてしまったのね、私たち。

木こり(嘘つき):メルヘンだねえ。

めがみ:どうすればワンダーランドから抜け出せるの?

木こり(嘘つき):ハートの女王は、仮想環境サンドボックスで実行中のアプリケーション内じゃ、神同然だ。
          キャスティングからストーリー改変までやりたい放題。

めがみ:赤ずきんちゃんの若さと美貌を妬んだおばあさんは、凄腕の猟師さんを雇って、可憐な美少女の赤ずきんちゃんと、ついでに狼を撃ち殺しました。
     めでたしめでたし。

木こり(嘘つき):だけど、それでも制約はある。

めがみ:エターナル・オカマ?

木こり(嘘つき):原作にいない登場人物は出せないってことさ。

めがみ:それでマジカルプリンセス・ホーリアップできなかったのね。

木こり(嘘つき):お伽噺の話の中で、ハートの女王をやっつけるんだ。

木こり(正直者):ちょっとちょっと! なんであんたが女神様やってるのよ!
           女神はアタシでしょ! このクソブス! どきなさいよ!

木こり(嘘つき):せーの。おりゃ!

木こり(正直者):ホアっ!? ゴボゴボゴボ……

めがみ:木こりさん。
     あなたが落としたのは、綺麗なハートの女王ですか? 汚いハートの女王ですか?

木こり(嘘つき):はーい。綺麗なハートの女王でーす。

めがみ:そんなものはこの世に存在しません。嘘つきには何も返しません。

木こり(嘘つき):ふふふ、ふひひひひ。

めがみ:やったわね。

木こり(嘘つき):湖の底。

めがみ:ハッピーエンド。

木こり(嘘つき):それじゃワンダーランドを脱出だ。

木こり(正直者):怨み晴らさでおくべきか〜〜〜〜〜!!!!

めがみ:きゃあ、妖怪海坊主!

木こり(正直者):アンタたち、よくもアタシを湖の底に沈めてくれたわね。
          湖底こていから金の斧と銀の斧を持ってきたわよ。

          ぶち殺してやる!!!

めがみ:斧を持った殺人鬼?

木こり(正直者):グリム童話って本当は恐ろしいのよ。

木こり(嘘つき):これイソップだから。

          うひゃあ!!

木こり(正直者):ドタマかち割ったる!!!

めがみ:ウサギさん早く。メルヘンがスプラッタになってしまうわ。

木こり(嘘つき):ワールドチェーンジ! 
          ハックな〜う!!!


☆3/灰かぶりの城下町


語り部:むかしむかし、あるところに、とても美しくて優しい心を持っていると自分で思っている娘がいました。

シンデレラ:意地悪なお母様とお姉様たちは、綺麗に着飾ってお城のパーティーに行ったわ。
       私は一人、おうちで暖炉の灰を片付ける。

語り部:娘は灰かぶりと呼ばれ、継母と姉たちにいじめられていたのです。

シンデレラ:私もパーティーに行きたいわ(ちらっ)
       王子様にお会いして、玉の輿(ちらっ)
       ああ、かぼちゃの馬車とガラスの靴をくれる魔法使いが現れないかしら(ちらっ)

魔女:嘘泣きはおよし、シンデレラ。

シンデレラ:まあ、魔法使いのオカマさん。

魔女:ほら、かぼちゃの馬車とガラスの靴だよ。

シンデレラ:ありがとう、オカマさん。

魔女:誰があんたにあげるって言ったのよ。
    パーティーに行くのはアタシ。
    あんたには見せびらかしに来ただけ。

シンデレラ:そんな、ひどい。

魔女:おーっほっほっほ。
    ちょっと可愛いからって調子に乗ってるんじゃないわよ。
    あんたなんてディズニープリンセス予選落ちよ。

シンデレラ:ひどいわひどいわ。オカマさんには応募資格すらないのに。

魔女:お黙りドブス! あんたにやるのはデッキブラシよ!
    暖炉のついでに便所でも掃除してなさい!

語り部:こうして灰かぶりは、便所磨きの二つ名を得て、掃除に一生を捧げましたとさ。
     めでたしめでたし。

シンデレラ:めでたくないわ。やり直しよ。

語り部:はいはいっと。


☆4/白雪姫の城



后:鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?

鏡:それはお后様です。

后:その心は?

鏡:他に登場人物がいないからです

后:それならこれでどう。

白雪姫:ああっ、世界ナンバーワンビューティフル、ホワイトスノウプリンセス白雪に大抜擢!?
     登場早々に死亡フラグ!?

后:鏡よ鏡、さあどっち!?

鏡:オカマはありえねーわ。

后:な、な、な。

白雪姫:鏡よ鏡、鏡さん。
     この世で一番美しいのは、だあれ? 私? 私よね?

鏡:俺。

白雪姫:なんでよ。

鏡:このフレーム金細工だぜ? 特大のダイヤまではまってる。
  見てくれこの高級感溢れるボディ。

  それに引き替え、お前さんはリボンからパンツまで全部出品しても100円以下だろ?

后:壊すわよ。

白雪姫:壊しましょう。せーの。

后:どりゃああああ!!

白雪姫:ちぇすとおおお!!

鏡:ちょっ、ちょっと待て。ハックな〜う。


☆5/裸の女王様の大広間


町娘:ねえウサギさん。さっきからずっと無限ループしてるわ。

仕立屋:あいつのが権限上だからなあ。

町娘:どうにかしてやっつける方法はないの?

仕立屋:任せとけ。今度の話はいける。

町娘:本当かしら。

仕立屋:ひそひそひそ。

町娘:まあ、それはいいアイディアね。

女王様:仕立て屋ー!! ヘイカモン仕立て屋!!

仕立屋:はい女王陛下。

女王様:このドレスはなに!?

仕立屋:イエス、ユアマジェスティ。
     それは男には見えないドレスでございます。

女王様:な、何ですって!?

仕立屋:魔法の鏡も断言する、この世で一番美しい女王様には、ご覧になっていると存じますが……

女王様:もも、もちろんよ! 基礎工事をすませたアタシは身も心も女!
     素敵なドレスじゃない! まるで空気のような軽さね!

仕立屋:はい、エアリズムという妖精の国の布で仕立てました。金額にして980イェン。

女王様:アタシに相応しい最高級品じゃない! 早速国中の女を集めて披露宴よ!
     ド貧乏のクソブスどもに、真のビューティフルを見せつけてやるわ!

     おーほっほっほっ!!

町娘:さあ始まったわ。ドレスのお披露目会。

女王様:よく集まったわね、雌豚ども。

     ひれ伏しなさい!
     これが妖精の国の布で仕立てた最高級のドレスよ!

町娘:見えませーん。女王様は裸でーす。

女王様:引っかかったわね、オカマ野郎!
     このドレスは女にしか見えない魔法のドレスよ!

仕立屋:そんな素材ねーし。

女王様:へっ!?

町娘:女王様は裸でーす!
    公然わいせつ罪! 逮捕してくださーい!

女王様:いやああああっっ!! 
     離しなさいよ!! アタシは女王よ!!
     こんなことしてただですむと思ってるの!!

仕立屋:いまだアリス!

女王様:しまった、仮想環境サンドボックスにセキュリティホールが。

     どきなさいヘッポコ!!

町娘:この穴に飛び込めば、ワンダーランドの外に出られるのね。

仕立屋:そうさ。メルヘンは終わりだ。

町娘:あなたは何者なのかしら?

仕立屋:ウサギ穴を抜けてからのお楽しみ。

町娘:さよならワンダーランド! えいっ!




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