The 13th prince(プリンス・オブ・サーティーン)

第32話 鳥籠の天使

★配役:♂4♀3=計7人

▼登場人物

モルドレッド=ブラックモア♂:

十六歳の聖騎士。
ブリタンゲイン五十四世の十三番目の子。
オルドネア聖教の枢機卿に「十三番目の騎士は王国に厄災をもたらす」と告げられた。
皇帝の子ながら、ただ一人『円卓の騎士』に叙されていない。

魔導具:【-救世十字架(ロンギヌス)-】
魔導系統:【-神聖魔法(キリエ・レイソン)-】

パーシヴァル=ブリタンゲイン♂
十七歳の宮廷魔導師。
ブリタンゲイン五十四世の十一番目の子。
『円卓の騎士』の一人で、陸軍魔導師団の一員。
お調子者の少年だが、宮廷魔導師だけあって知識量はかなりのもの。

魔導具:【-自在なる叡知(アヴァロン)-】
魔導系統:【-元素魔法(エレメンタル)-】

ラーライラ=ムーンストーン♀
二十七歳の樹霊使い(ドルイド)(外見年齢は十三歳程度)。
トゥルードの森に住むエルフの部族『ムーンストーン族』の一員。
人間の父と、エルフの母のあいだに生まれたハーフエルフ。
『ムーンストーン族』のエルフには見られない青髪と碧眼は、父親譲りのもの。

父親が魔因子を持たない人間だったので、〈魔心臓〉しか受け継がなかった。
エルフながら魔法を使うためには、魔導具の補助が必要である。

魔導具:【-緑の花冠(フェアリー・ディアナ)-】
魔導系統:【-樹霊喚起歌(ネモレンシス)-】

カテリーナ=ウルフスタイン♀
十六歳の戦乙女(ヴァルキュリア)
特に重装乙女(ブリュンヒルデ)に分類される近接戦闘のエキスパート。

ウルフスタイン伯爵の娘。
大学院(アカデミア)の高等部を退学し、父親の口利きで聖騎士団に加入した。
金髪縦ロールのお嬢様スタイルだが、性格は豪快を絵に描いたよう。

魔導具:【-轟雷の雄叫び(ミョルニル)-】
魔導具:【-金剛怪力帯(メギンギョルズ)-】

ルカ=キトハ♀
十八歳のメイド。聖パウェル救貧院の出身の孤児。
母親は、かつて夜の街で人気を博した『流浪の歌姫ルサルカ』。
父親は貴族で、『ルサルカ』のパトロンだった。

ツァドキエルの人造天使計画の一端で洗礼を受けた亜人間(デミヒューマン)
妖鳥歌声(セイレーンボイス)という畸形器官より発せられる歌声は、精神魔法に類似した力を持つ。

慈悲深きツァドキエル♂
オルドネア聖教の異端審問機関『黙示録の堕天使』の一人。
階級は第四位の『主天使』であり、マスタードミニオン≠ニも呼ばれている。
人為的に新種の亜人間(デミヒューマン)を造り出し、神の兵士とする、人造天使計画の立案者。
孤児院から選りすぐった少年少女に 天使の聖餅(エンゼル・プロスフォラ)≠与え、亜人間(デミヒューマン)に転生させる実験を行っている。

表の顔は、オルドネア聖教の聖パウェル大聖堂を治める、大司教ピレロ。
帝都ログレス全域を教区として、パウェル派の教会および施設を監督している。
パウェル派は、第七使徒パウェルの教典を重んじる宗派であり、戒律は緩やかで、愛と奉仕を信条とする。
戒律の厳しいヨーゼフ派とは、解釈の違いでたびたび論争が起こっているが、一つの宗教という認識は一致しており、互いに尊重し合っている。

※ツァドキエル、ピレロ大司教の年齢の詳細は、設定していません。
演じる方の声質、解釈にお任せします。作者は三十代〜六十代ぐらいを想像しています。
両キャラを演じ分けするかしないかもお任せします。ツァドキエルは仮面をつけており、素顔はわからない状態です。

魔導具:【-教導の錫杖(ゲドゥラー・サイケデリック)-】
魔導系統:【-精神異能(サイコカルト)-】

バルナッハ侯爵♂
□1のみ登場。被り役でもOKです。

※注意
・ルビの振ってある漢字は、ルビを読んでください。
・特定のルビのない漢字は、そのまま読んでください。



□1/貴族邸宅、荒廃した豪奢な寝室


ルカ:踊れ 優しい娘よ 私の歌に合わせて
   回れ 飛べ 軽やかに しなやかに 細波(さざなみ)の音に合わせて

バルナッハ侯爵:おお……美しい歌声だ……

          妻を亡くし、娘を亡くし……
          天涯孤独の身になった私の元に、お前はやってきた。
          お前は本当に、天使なのかもしれん。

ルカ:そう、私は天使です。
    あなたを癒やすために遣わされた天使です。
    私と共に、微睡みの中で見える、楽園を遊び歩きましょう。

バルナッハ侯爵:お前の子守歌のお陰で、あの悪夢も忘却の彼方だ。

          娘は自殺し……妻も心労が祟って、後を追うように死んだ。
          悪夢は、もう見ない。

(陶然とした顔で呟きを漏らした侯爵は、自らの漏らした言葉に疑念を抱く)

バルナッハ侯爵:自殺……?
          ローラは何故自殺したのだ……?

          ローラが自殺する一年前……
          貴族の倣いに従って、ローラをオルドネア聖教の修道院に入れた……

ルカ:あなたの妻のように抱いて、あなたの娘のように愛でて。
   私は失われた愛を埋める歌を(さえず)ります。
   あなたの行き場のない愛の受け皿となります。

バルナッハ侯爵:私の腕の中で(ささや)くこの娘は誰だ……?
           そうだ、この娘は……
           最愛の一人娘を死に追いやり……妻も殺した……
           オルドネア聖教の……修道女――!!

ルカ:――!?

(正気に返ったバルナッハ侯爵は、胸元に寄り添うルカを突き飛ばし、荒れ果てた室内を見渡す)

バルナッハ侯爵:ここは……私の寝室なのか……!?
          見る影もなく、荒れ果て、埃塗れになっている……
          私は一体……今まで何を……!

(寝室のドアが軋みを立て、白い翼を模した飾りを背負う、仮面の男が入ってくる)

ツァドキエル:神は愛なり。
         穢れ果てし我さえ愛したもう。
         嗚呼、神は愛なり――

バルナッハ侯爵:何者だ、お前は……!?

ツァドキエル:私はツァドキエル。
        異端審問機関『黙示禄の堕天使』が一翼。
        第四位の座に連なる主天使(しゅてんし)ドミニオンの一人です。

バルナッハ侯爵:思い出してきたぞ……!
           私は、娘の死を追求する過程で、お前たちオルドネア聖教の悪行(あくぎょう)を掴んだ。
           そして――

ツァドキエル:あなたは不幸です。
        触れてはならぬ神の秘儀に触れ、その罰を受け、孤独に突き落とされた。

        私はその境遇を哀れみ、失われた愛を注ぎ足しました。
        けれど幻想楽園(シャングリラ)は消え去った。
        哀れな子羊よ、何故(なにゆえ)辛く苦しい現実に立ち返ったのです?

バルナッハ侯爵:口封じに殺すには、侯爵である私は目立ちすぎる。
           ならば、妻と娘を失ったショックで、心身を(わずら)い、屋敷に閉じこもる。

           社会的な抹殺……
           貴様らの筋書きは、こんなところだろう……!

ツァドキエル:神よ、この者をお許しください。
         この者は自分の言っていることを理解していないのです。

バルナッハ侯爵:覚悟しておけ――!
           お前たちオルドネア聖教の悪事、私の知りうる限りを一つ残らず暴露してやる――!

ツァドキエル:私は、幻想楽園(シャングリラ)の中で、緩やかな魂の変質を促してきました。
         しかし幻に気付いた今、アンゲロスの歌声は、もはや届きません。
         あなたにはドミニオンの教導を施しましょう。

バルナッハ侯爵:錫杖(しゃくじょう)の音色――!?
           この音は……

           うう、頭が……
           意識が霞んでいく……

ツァドキエル:悔い改めなさい。
         神に楯突く愚かなる振る舞いを。
         教導(ゲドゥラー)錫鳴(すずな)りに耳を澄ますのです。

バルナッハ公爵:棺桶に眠る若い娘……
           それに縋りついて泣く女……

           あれは誰だ……?

ツァドキエル:あなたがくすねた、楽園(エデン)の果実を差し出しなさい。
         アダムの林檎……自我という悪魔の産物を。

バルナッハ侯爵:今度は女が、(ひつぎ)に納まっている……
           傍にいるのは……私か……?

           あの女と娘は、誰だ……?
           とても大切な……かけがえのない……
           何も思い出せん……

           壊れていく……私の…心が……

ツァドキエル:打ち砕かれよ。
         楽園で暮らした、無垢なる土塊(つちくれ)の人形へ還れ。
         蒼き木星の教戒(いましめ)を受けるがよい――

バルナッハ侯爵:うあああああああ――!!!

(錫杖が激しい錫鳴りを打ち響かせた瞬間、バルナッハ侯爵の絶叫が響き渡り、糸の切れた人形のように項垂れる)

バルナッハ侯爵:ここは……どこだ……?
           あなたは……誰だ……?

           私は……誰だ……?

ルカ:ツァドキエル様……

ツァドキエル:よく働きました、小天使(しょうてんし)よ。

         この者が俗世間より孤立して、六ヶ月と少し。
         廃人と化していても、不思議とは思われない頃合いでしょう。

ルカ:私は、侯爵様を救えませんでした。
    私の愛では、この方を変えられなかった。
    結末は、二度と戻せない、魂の座の破壊……

ツァドキエル:落胆してはいけません。
         あなたはあなたの、愛の歌を奏でなさい。
         あなたの歌に耳を澄ます者たちのために。

         あなたは天使なのです。

ルカ:はい、仰せの通りです。
   でも私の愛は誰のために……?
   誰かを救い、誰かに愛されたことは一度でも……?

   いいえ、私は天使ではない……
   歌い、奏で、もてあそばれて、捨てられる……
   ああ……私は、ただの小鳥の玩具(おもちゃ)……

ツァドキエル:迷いは罪の穢れです。
        疑うなかれ。迷うなかれ。
        さもなくば、やがてあなたの翼は、空を舞う力を失い、地の底へ堕ちるでしょう。

ルカ:空を追われる……?
   いや……! 大空は私の家……!
   私が帰る、唯一つの場所なのです……!

ツァドキエル:罪に穢れた記憶の断片は、心の海に捨て置きなさい。
         慈悲(ケセド)の煌きに、魂を洗うのです。

ルカ:ああ、この音色は――

    心地よい……
    まるで天上の国で響き渡る、鐘の音のよう……

ツァドキエル:あなたは天使です。穢れを知らぬ天使です。

ルカ:そう……私は天使……

ツァドキエル:愛の歌を奏で、心病める者を幻想の楽園で癒やす者。

ルカ:神に愛され、神の愛を伝える者……

ツァドキエル:迷いは晴れましたか、小天使(しょうてんし)よ。

ルカ:はい、ツァドキエル様。

ツァドキエル:これからも神のため、教会のために働いてくれますね。

ルカ:慈悲(ケセド)の王座と、蒼玉(サファイア)の木星に誓って。
    マスタードミニオン――


□2/大学院研究棟、パーシヴァル研究室


パーシヴァル:あれ? 珍しいねモル。
         真っ昼間からおいらの研究室に訪ねてくるなんて。

モルドレッド:お前も知っているだろう。
        帝国は、オルドネア聖教との長きに渡る軍事協力を、一方的に破棄してきた。
        帝国軍に派遣という形で所属していた聖騎士は、任務を解かれた状態にある。

パーシヴァル:要は、失業中なんだよね。

モルドレッド:待機任務だ。
        今後の処遇は、グレゴリオ枢密院の決定待ちだ。

        ん? その机の上の包装……
        フラワーリーフか。

パーシヴァル:ああそれ。モルにあげるよ。

モルドレッド:男から花のプレゼント……二重の意味で要らないな。

パーシヴァル:ラーライラにあげたら?

モルドレッド:な、なんで俺があいつに花なんかやらないといけないんだ。

パーシヴァル:じゃあカテリーナ?

モルドレッド:お前が渡せばいいじゃないか。
        ほらあれだ、パトリシアだったか?

パーシヴァル:振られたよ。

モルドレッド:そ、そうだったのか……理由はなんだ?

パーシヴァル:三日前、西区の輸入雑貨屋で、レイモンド子爵の息子と一緒に歩いてるところに出くわしたんだ。
         最初はただの友達って言い訳してたけど、途中からおいらが悪いってことになって、最後は三下り半だよ。

モルドレッド:……パーシヴァル! 直談判(じかだんぱん)にいくぞ!

パーシヴァル:いいよ、もう。
         おいらも魔法の研究とか、宮廷魔導師の任務とかで、ほったらかしにしてたしさ。

モルドレッド:いいはずがないだろう!
        オルドネア聖教律法『他人の妻を欲するなかれ』

パーシヴァル:おいら、オルドネア教徒じゃないし、結婚してないし。

モルドレッド:そんなことは関係ない!
        そいつらに正義の裁きを下してやらねば、俺の気が済まん!

パーシヴァル:モルの気を晴らしてどうするんだよ。

モルドレッド:腹は立たないのかパーシヴァル!?

パーシヴァル:腹は立つよ。
         でも冷静に考えれば、今は研究に集中したい時期なんだよね。
         独り身(フリー)のほうが、プレゼントとか何だとか、余計なことで悩まないで済む。

モルドレッド:そうか、そのフラワーリーフは……!

        パーシヴァル、安心しろ!
        奴らは、二人揃って地獄に堕ちる!
        オルドネアよ、不義を働いた悪党どもを、煉獄の炎へ投げ込みたまえ!

パーシヴァル:……それ、救世主のやることじゃないような。
         ま、そんなわけだからさ、そのフラワーリーフ持って行っちゃってよ。

モルドレッド:うーん……

(モルドレッドが困ったようにフラワーリーフを持ち上げた直後、研究室の扉を破るように飛び込んでくるカテリーナ)

カテリーナ:モルドレッド様ー!

モルドレッド:カ、カテリーナ……!

パーシヴァル:どうしたの、その修道服……

カテリーナ:わたくしも立派な聖騎士団の聖騎士でしたでしょう?

モルドレッド:神聖魔法が一つも使えない。

パーシヴァル:伯爵家のコネで入った。

カテリーナ:聖騎士団解散の後、どのように生きればいいか――
       わたくし、午後のティータイムに考えて決めましたの。

       わたくしカテリーナ=ウルフスタインは、今日から病める者、傷ついた者を癒やす治療師(ヒーラー)ですわ!

パーシヴァル:昔勉強してたけど、全然合わなくて投げたんじゃなかったっけ?

モルドレッド:絶対に向かない。止めておけ。

カテリーナ:モルドレッド様、パーシヴァル様。
       病で苦しむ人々に癒しの手を差し伸べる白衣の天使――
       わたくしの、どこが向きませんの?

モルドレッド:病で苦しむ人々に癒しの手を差し伸べる白衣の天使だ!
        金槌を振り回してきたお前の経歴と、まるで正反対だろうが!

カテリーナ:病と闘うと書いて、闘病と読みますわ。
       わたくしのミョルニルで、病魔をボコボコにぶちのめして差し上げます!
       わたくしの看病なら、百人力ですわ!

パーシヴァル:カテリーナ、人間の体は調子の悪い魔導具じゃないんだよ。
         叩いたって直らないよ。

カテリーナ:三ヶ月後、ログレスの帝国美術館に、『祈りを捧げる聖女カテリーナ』の油絵が飾られますわ。
       お父様とお母様が、パリス共和国から一流の画家を招聘(しょうへい)して描かせてくださいますの。
       わたくし、名実共に、伝説の聖女ですわー!

モルドレッド:酷すぎる……

パーシヴァル:いやー、お金の力って偉大だね。

カテリーナ:あら、モルドレッド様。そのフラワーリーフ――

モルドレッド:ああ、これか。
        ……さっき知り合いにもらってな。

カテリーナ:ラーライラに、ですの――?

モルドレッド:違う。

カテリーナ:じゃあわたくしですわね!

モルドレッド:おい、なんでそうなるんだ!?

カテリーナ:モルドレッド様がお花を渡す相手は、わたくしかラーライラの二択以外ありえませんわ!
       ラーライラじゃないなら、消去法でわたくしですわー!

モルドレッド:お前……俺のことを内心馬鹿にしてないか!?
        聖ヨーゼフ大聖堂のシスターにでも渡そうかと思ってたんだ。

カテリーナ:欲しいですわー。

モルドレッド:…………

カテリーナ:欲ーしーいーでーすーわー。

モルドレッド:……持って行け、泥棒。

カテリーナ:(つつし)んで頂戴いたします。

モルドレッド:はあ……教会の奉仕活動に行ってくる。

カテリーナ:はい、モルドレッド様。

モルドレッド:来るな。

カテリーナ:嫌です。

モルドレッド:……勝手にしろ。

カテリーナ:何処まででもお供いたしますわ!

(連れ立って出て行くモルドレッドとカテリーナを見送ったパーシヴァルは、大きく伸びをする)

パーシヴァル:ふわ〜……おいらも外で散歩してこよっと。

(研究室から出たパーシヴァルは、廊下の隅から覗く青い髪が目に入る)

パーシヴァル:ん? あの青い髪……

         ラーライラ?

ラーライラ:……!?

パーシヴァル:どうしたの?
         そんな廊下の角で、こっちを覗き込むようにして。

ラーライラ:べ、別に私……
       パーシヴァルの研究室に、みんな居るかなって思って寄っただけ……

パーシヴァル:さっきまで居たんだけどね。
         おいら、軽く食べてこようと思うんだけど、ラーライラも行く?

ラーライラ:いい……

       ねえ、パーシヴァル。
       さっきカテリーナが持ってたフラワーリーフ……
       あれ……

       ううん、なんでもない――!

パーシヴァル:行っちゃった……
         おいら、余計なことしちゃったかなあ……


□3/帝都西区、ブラックモア邸の食堂



ラーライラ:モルドレッド……遅いな……

(菜食料理を並べたテーブルで、ぽつねんと座っているラーライラ)

ラーライラ:あ、戻ってきた。

モルドレッド:まったく……お前ときたら……!

カテリーナ:うう……気持ち悪いですわ……

ラーライラ:カテリーナ――? どうしたの?

モルドレッド:適性が欠片もない魔晶核を使って、不適合発作を起こしたんだ。

カテリーナ:今度は負けませんことよ……!
       魔晶核がわたくしに合わせないなら、力ずくでねじ伏せますわ……!

モルドレッド:その性格だ。
        お前は神聖魔法を使っていた古代人とは、根本的に波長が合わないんだ。

カテリーナ:わたくし、教会の悪しき伝統を打ち破る風雲児ですわね……!

モルドレッド:そんな聖職者は、今も昔もこれからも居ない。
        体質に合わない魔晶核を無理に使うと、重大な後遺症が残るぞ。

カテリーナ:うう……
       でもわたくし、古代の聖人に挑んだ甲斐がありましたわ……!
       モルドレッド様が一晩付きっきりで看病してくださるんですもの――!

ラーライラ:え――? それってどういうこと?

モルドレッド:魔晶核の不適合発作は、急性ショックの他に、遅延型反応もある。
        最も多いものは心臓麻痺。発作から四十八時間は、要警戒時間とされる。

        ロンギヌスは、現存する魔導具でも、最上級の治癒魔法を扱える。
        俺自身は、治癒魔法は不得意だが……一晩なら集中力も続くだろう。

ラーライラ:それはわかったけど……どうしてモルドレッドの屋敷に?

カテリーナ:わたくしの希望ですわ。

ラーライラ:い、意味がわからない……!
       病院か、もっと大きい教会に行けばいいじゃない……!

モルドレッド:近頃、貴族と教会のあいだで(いさか)いが増えている。
        こんなのでも一応、ウルフスタイン伯爵家の令嬢だからな。

カテリーナ:万一後遺症が残ったら、教会の監督不行届(ふゆきとど)きで訴えますわ。

モルドレッド:本人はごねるし、街の教会には責任が重いし、それで俺が預かってきたんだ。

ラーライラ:一晩中、同じ部屋に居るの……!?

モルドレッド:よせ、言うな。
        あまり意識しないようにしてるのに……

カテリーナ:まあ、一夜の過ちが起こったらどうしましょう!
       わたくし、胸がドキドキして参りました!

       けれどこんなこともあろうかと、ブラもショーツも、『ソレーヌ=ブロウ』デザインのシルクランジェリーですわ!
       いついかなる時でも恋の臨戦態勢、不意打ちのロマンスでも迎え撃つのが、淑女の嗜みですわ――!

モルドレッド:シルクのランジェリー……!
        それは一体どんなものなんだ……!

ラーライラ:…………
       安心して。私も一緒に看病するから。

カテリーナ:心配ご無用ですわ。
       あなたは自分のお部屋で、草木のように寝静まっていていいんですのよ?

ラーライラ:あなたの心配じゃない。モルドレッドが心配なの。

カテリーナ:どうしてあなたが、モルドレッド様を心配なさるのかしら?

ラーライラ:そ、それは……

カテリーナ:モルドレッド様ー。
       わたくし、何だか胸が苦しいですわ……

ラーライラ:わざとらしい……!

カテリーナ:ふふん。

       あら……?
       あの、わたくし、本当に、動悸が――

ラーライラ:おやすみなさい。

       ねえ、モルドレッド……!

モルドレッド:――ちょっと待て。
        本当に様子がおかしくないか?

ラーライラ:どうせカテリーナの演技……

カテリーナ:ぶぐぶぐぶぐ……

ラーライラ:白目剥いて、泡吹いてる……

モルドレッド:脈がないぞ……

ラーライラ:嘘――! モルドレッド!

モルドレッド:ああ――!
        オルドネアよ、弱まる命の鼓動に復活の奇蹟を――!
        俺の厄払いと……厄介払いを――!


□4/帝都西区、ローエングリン侯爵邸パーシヴァル自室



パーシヴァル:『魔導進化論』――
         何故完全な魔因子を持つ古代人が激減し、魔心臓しか持たない準魔因子が主流派になったか。

         久々に読み応えがありそうだ。
         よーし、読むぞー!

ルカ:失礼します。ベッドメイクに参りました。

パーシヴァル:ああ、うん。ありがとう。

         あれ? 初めて見る顔だね?

ルカ:本日よりローエングリン侯爵様のお屋敷で働かせていただくことになりました。
   ルカ=キトハと申します。

   ご用命があれば、なんなりとお申し付け下さいませ、十一皇子様。

パーシヴァル:ねえ、歳は幾つ?
         おいらとあまり変わらないように見えるけど。

ルカ:十八でございます。

パーシヴァル:そっかあ。
         うちのメイド長、おいらの教育に悪いとか言って、年増ばっか雇ってたんだよね。
         久々に可愛い子がきて、おいら嬉しいよ。

ルカ:十一皇子様のことは、よく存じ上げております。
    帝国でも指折りの魔導師で、魔法研究の世界でも名高い、皇族きっての秀才だと。

パーシヴァル:いやあ、客観的に見てもそう思うけど、面と向かって言われると照れちゃうな。

ルカ:敬愛する十一皇子様のお屋敷で働けて光栄に思います。
   この幸せを、神に感謝します。

パーシヴァル:神って、オルドネア聖教?

ルカ:はい。私は聖パウェル救貧院(きゅうひんいん)に身を寄せておりました。

パーシヴァル:パウェル派か。緩い方のオルドネア聖教だよね。
         おいらの親友が厳しい方のヨーゼフ派で、ガッチガチに固くてさ。

ルカ:厳しい方、緩い方と言われると、いささか語弊(ごへい)がありますが……
   ヨーゼフ派は正義と戒律を、パウェル派は愛と慈悲を信条としております。

   パーシヴァル様はどちらの教派なのですか?

パーシヴァル:おいらは無神論。

ルカ:神を信じないとおっしゃるのですか――!?

パーシヴァル:だって見えないし、声を聞いたこともないし。

ルカ:見えます! 聞こえます!

パーシヴァル:それは妄想だよ。幻覚と幻聴。

ルカ:お可哀想に……
   十一皇子様は神の愛を知らないのですね。

   しかし安心してください。
   十一皇子様は、神に愛されています。

パーシヴァル:うへえ、勘弁してよ。
         いくら可愛くても、布教活動するようなのはご免だよ。
         おいら、神様は信じないから、押し付けるのは止めてね。

ルカ:は、はい……!
    申し訳ありませんでした……!

パーシヴァル:わかってくれればいいよ。

ルカ:神よ、彼をお許しください。
    彼は自分の言っていることを理解していないのです。

パーシヴァル:……わかってるのかなー。


□5/一週間後、聖パウェル大聖堂、最奥部の至聖所



ピレロ大司教:よくぞいらっしゃいました、モルドレッド皇子。

モルドレッド:聖パウェル大聖堂、最奥部(さいおうぶ)至聖所(しせいじょ)……
        此処に入ることを許されるのは、教会の管理者である叙聖者(じょせいしゃ)のみとされる。

        聖騎士とはいえ、部外者の私を、此処に招き入れるとは……
        ピレロ大司教、私に話とは――?

ピレロ大司教:……モルドレッド皇子。
         これから話すことは、内密にお願いいたします。


□6/早朝、ローエングリン侯爵邸の正門前


(歌を口ずさみながら、ほうきで枯れ葉を片付けているルカ)

ルカ:踊れ 優しい娘よ 私の歌に合わせて――

パーシヴァル:おはよう、ルカ。

ルカ:おはようございます、パーシヴァル様。

パーシヴァル:ねえ、今の歌は?

ルカ:き、聞かれたのですか。お恥ずかしい限りです……

パーシヴァル:綺麗な歌声だったよ。思わず足を止めちゃった。

ルカ:パーシヴァル様、使用人風情にお世辞はお止めくださいませ。

パーシヴァル:時々、仕事しながらその歌、歌ってるよね。
         それ、なんて歌?

ルカ:恐縮です……

   あれは……ローマ都市国家のアリエッタだそうです。
   母が口ずさんでいた歌で……私が覚えている、数少ない母の記憶です。

パーシヴァル:ローマ都市国家。
         言われてみれば、南欧系の顔立ちしてるよね。

         おいら、そろそろ行かないと。

ルカ:行ってらっしゃいませ、パーシヴァル様。

パーシヴァル:また後で、歌聞かせてよ。

ルカ:わ、私の拙い歌でよろしければ――!


□7/トゥルードの森、林業指定区域



ラーライラ:種より目覚めし、新緑の若木。
       天頂の光に枝を伸ばし、森に鎮まる大樹と――

パーシヴァル:ラーライラ! ラーライラ!

ラーライラ:えっ――!?

パーシヴァル:魔力を込めすぎだよ。
         早すぎる促成についていけなくて、みんな根腐れしちゃってる。
         あーあ……ここいらの苗木は、全滅だなあ。

ラーライラ:…………

パーシヴァル:最近どうしたの?
         トゥルードの森の緑化事業、ラーライラの担当区域だけ、大幅に遅れてるよ。

ラーライラ:……別に。ちょっと集中出来ないだけ。

パーシヴァル:あんまり不調が続くなら、他のドルイドに交代してもらったほうがいいんじゃない?

ラーライラ:…………
       ねえ、パーシヴァル。

       ……私のこと、可愛いと思う?

パーシヴァル:え? 突然の告白?
         いやあ、困っちゃうなあ〜。

ラーライラ:か、勘違いさせてごめんなさい。
       そういう意味じゃないの。全然違うの。

パーシヴァル:そこまで力一杯否定しなくてもいいだろ。
         可愛くないなー。

ラーライラ:可愛くない……

パーシヴァル:うそうそ、可愛いと思うよ。
         十人中、七人は可愛いって言うんじゃないかな。

ラーライラ:……カテリーナと私だったら?

パーシヴァル:カテリーナか。うーん……

ラーライラ:……やっぱり。

パーシヴァル:ラーライラも十分可愛いよ。

ラーライラ:私……人間の美的感覚がわかってきたの。
       目鼻立ちがパッチリしてて、彫りが深くて、胸が大きくて腰は細い。
       髪の色は金髪、優雅な言葉遣いと立ち振る舞い、家はお金持ち。

       人間の理想って……カテリーナのことじゃない――!

パーシヴァル:特徴だけ並べると完璧なのに、実物は何とも言い難いのは何でだろうねー……

ラーライラ:私……カテリーナに何も勝てるところがない……

パーシヴァル:恋愛はパラメーターで勝負するバトルじゃないよ。

ラーライラ:……人間は、どんな時に相手を好きになるの?

パーシヴァル:うーん……おいらの考える本音で言うよ?

ラーライラ:お願い。

パーシヴァル:軽蔑したとか幻滅したとか、後で言わないでよ?

ラーライラ:……わかった。

パーシヴァル:まず最初に、可愛さの基準をクリアしてること。

ラーライラ:うん。

パーシヴァル:次に、一緒にいて緊張や気疲れを感じないこと。

ラーライラ:うん。

パーシヴァル:最後に……エッチなこと出来そうな雰囲気かってこと。

ラーライラ:えっ、えっ!?

       そ、それで?

パーシヴァル:終わり。

ラーライラ:…………

       人間って最低……

パーシヴァル:そう言わないでよ。
         恋愛の門戸(もんこ)は広く開かれてるってことだよ。

         で、ラーライラ。
         人間に好きな男が出来たの?

ラーライラ:……わかってるくせに。

パーシヴァル:たぶんその人間の男も、ラーライラのこと好きだと思うよ。

ラーライラ:本当……!?

パーシヴァル:うん。
         でもさっき言ったように、手に入りそうで入らない距離だから、意識するんだ。
         一向に進展がなかったり、照れ隠しに突っぱねたりすれば、恋は冷める。

ラーライラ:どうすればいいの?

パーシヴァル:苦情は勘弁してよ?

ラーライラ:早く教えて!

パーシヴァル:隣に座ってピタッと密着。

ラーライラ:わ、私から――!?

パーシヴァル:その時、胸をぐっと寄せて当てる。

ラーライラ:むむ、胸っ!?
       無理っ! 私、そんなことできない――!!

パーシヴァル:……そうだよね、ごめん。

ラーライラ:違う、馬鹿! 出来ないけど……!

パーシヴァル:こう、人間の男はムラムラッとくるとスイッチが入るわけ。
         そこで強烈に意識させて、その場はぱっと身を引くんだよ。

ラーライラ:私……そういう駆け引きみたいなことはしたくない。

パーシヴァル:そうは言っても、どっちかからアクション起こさないと、永久に進展しないよ。

ラーライラ:私は、一緒に朝の森の道を歩いたり、草原の風に吹かれたり。
       日陰でひっそりと咲くスズランのような、静かで穏やかな関係を育みたいの。

パーシヴァル:人間の男は、基本的に恋にせっかちだ。
         ただでさえ焦れったいのに、ハーフエルフの時間感覚だったら、痺れをきらしちゃうよ。

ラーライラ:だって、私まだそんな……!
       それに彼は……待ってくれると信じてる。

パーシヴァル:ラーライラだけだったらね。
         でも他の女の子に猛プッシュされたら、嫌になって、そっちに流れちゃうかもよ。
         たとえば金髪のお嬢様とかに。

ラーライラ:……!

パーシヴァル:両想いを過信しないほうがいいよ。
         今この瞬間にだって、世界中でカップルや夫婦が破局を迎えてるんだ。

ラーライラ:パーシヴァル、あなたって何でも計算尽くなのね。
       少し苦手になりそう……

パーシヴァル:ごめんごめん。
         親しくなった相手にはよく言われるよ。
         だからおいら、友達少ないんだ。
         こんなに長く付き合ってる友達は、あいつ一人だよ。

ラーライラ:…………

パーシヴァル:おいら、二人のことは応援してるよ。
         気分悪くしちゃったらごめんね、ラーライラ。

ラーライラ:…………


□8/ローエングリン侯爵邸、パーシヴァル自室



ルカ:回れ 飛べ 軽やかに しなやかに 
    細波(さざなみ)の音に合わせて――

パーシヴァル:…………

         驚いたなあ。
         どこかで歌、習ってたの?

ルカ:暇を見つけて歌っていただけです……

パーシヴァル:普通の素人には聞こえないけど……
         お母さんは、ひょっとして歌手?

ルカ:……はい。
   二十年以上前、夜の酒場を転々としていた『流浪(るろう)の歌姫ルサルカ』……

パーシヴァル:聞いたことある。
         ある時、パッタリ消えちゃった伝説の歌姫だっけ?

ルカ:……私を妊娠したからです。
   でも母にとって、歌は私よりずっと大事なものでした。
   私を産んだ後、母は幼い私を捨て、夜の世界へ舞い戻っていきました。

   けれど、私を産んだ時に、母は何かを失ってしまったのか――
   母の復帰を熱狂的に歓迎したファンも、ぽつぽつと離れていき……
  『流浪の歌姫ルサルカ』は……夜の伝説に消えました。

パーシヴァル:……そうだったんだ。

         お父さんは?

ルカ:父は……名前は明かせませんが、とある貴族の嫡子でした。
    父は、母のパトロンだったんです。

パーシヴァル:ルカ……貴族の血を引いてたんだ。

ルカ:はい。
   でも私は、父の魔因子を受け継がなかったので……
   孤児として、救貧院に預けられました。

パーシヴァル:……よく聞く話だね。
         貴族の間に、魔因子を持たない子供が産まれると、養子に出しちゃうって。

ルカ:申し訳ありません、使用人風情が身の上話など……

パーシヴァル:おいらこそ、興味本位で色々聞いちゃってごめんね。

ルカ:それでは、私は仕事が残っておりますので、この辺で……

パーシヴァル:うん、ありがとう。

(扉の前で一礼して退室したルカを見送った後、パーシヴァルはルカの複雑な境遇を思って呟く)

パーシヴァル:歌姫の母親と、貴族の父親か――
         もし運命の歯車が、あと少し噛み合っていたら……
         ステージの上に立つ歌手だったり、貴族の女の子だったりしたのかな。

         運命って皮肉だね。


□9/ブラックモア邸、応接間


(応接間のソファに腰掛け、気鬱な表情で考え込んでいるモルドレッド)

モルドレッド:…………

ラーライラ:モルドレッド。

モルドレッド:ラーライラか。

ラーライラ:どうしたの? 難しい顔して。

モルドレッド:ちょっと考え事をしていてな。

ラーライラ:ソファー、隣……いい?

モルドレッド:ああ。

モルドレッド:…………

ピレロ大司教の声:人の国の王は倒れ、皇子は次々と死す。
            荒れ狂う混沌と破壊を、新しき王の光が鎮めん。
            なれどその王は、大悪魔(ダイモーン)の口づけを受けた簒奪者なり。

ラーライラ:(二人きりで、こんなに距離が近いのって、初めて……)
       (肩も胸も……エルフとは全然違う……)
       (人間って筋肉質なのね……父さんもこんな感じだったの……?)

ピレロ大司教の声:悪しき太陽の邪悪な統治に、一人の英雄が立ち上がる。

            ()は、原罪の十字架より解き放たれし、呪われし皇子。
            人々、災厄(わざわい)の烙印は、若き英雄を隠す秘蹟(ひせき)であったと知る。

ラーライラ:(今なら自然な雰囲気で……)

       (モルドレッドも人間なら、パーシヴァルが言ってたようなこと、考えてるの……?)
       (いきなり豹変したら……?)
       (受け入れるの? 私、まだ……)
       (でも拒んだら……! ああどうしよう……!)

       (私、カテリーナに負けたくない……!)
       (母さん……緑の花冠(フェアリー・ディアナ)……!)
       (私に勇気をちょうだい……!)

ピレロ大司教の声:汝らの作りし、空席の十三番目を見よ。
            忌まわしき数字13th(サーティーン)は、審判の刻に反転す。

ラーライラ:(くっついちゃった……! 不自然じゃないかな……?)

       (み、耳が熱くなってきた……!)
       (落ち着かないと、落ち着かないと……!)
       (胸一杯に二酸化炭素を吸い込んで、新鮮な酸素を吐き出す……)
       (違う! これは光合成……! 太陽も出てないのに……!)

モルドレッドの声:ピレロ大司教、それは誰の預言なのです?

ピレロ大司教の声:千年以上前に記された古文書の一節……
            長らく偽典に分類されていた書物に、この預言はありました。

モルドレッドの声:まさか……その古文書とは……

ピレロ大司教の声:『ジュダの預言書』……
            彼の裏切りの使徒、十三使徒ジュダが記した預言です。

モルドレッドの声:ジュダ……!

ラーライラ:(こんなにずっと寄り掛かってるのに……)
       (密着すれば意識するんじゃなかったの……!?)
       (胸……? 胸がないから……!?)
       (人間には、胸がないと駄目なの……!?)

モルドレッド:ラーライラ。

ラーライラ:――は、はい!

モルドレッド:眠いのか?

ラーライラ:え――?

モルドレッド:眠いなら、部屋で寝たほうがいいぞ。
        こんなところでうとうとしていると、風邪を引く。

ラーライラ:…………

モルドレッド:ラーライラ?

ラーライラ:……おやすみ。

モルドレッド:なんだあいつ。女はよくわからんな。

(ラーライラの姿が階段の奥に消えた後、再び黙想に耽るモルドレッド)

ピレロ大司教の声:グレゴリオ枢密院では、ジュダの預言書を真実と見なすかどうか、
            教皇猊下(げいか)を筆頭に、枢機卿たちを交えて、審議が行われています。

            教皇猊下のご聖断(せいだん)が下るのは、一週間後の今日です。

モルドレッド:一週間後か……
        長い一週間になりそうだ……



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